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三世考

地理の章

北方の律国 【壽-ジュ】
 一年の半分を雪と氷に閉ざされる最北方を領土とする国。
 国領のほとんどが寒冷地の為、農作業ができる時間は限られ、その上一度不作に陥ると膨大な死者が出る。それ故、国政では備蓄や農耕への援助など、越冬に対する備えが最優先で行われている。領土内は農地以外は広々とした草原や深い森に占められており、特に野生動物を使用した毛皮製品は国内他国問わず高額で取引される。
 また、九尾狐による「宮中惑乱」で国内が壊滅状態に陥って以来、二度とそのような過ちを繰り返さぬ為、現在では女王が国を治めるのが慣例となっている。初代の女王である賈翠を始め歴代の女王たちが律を整え、民の教育に力を注いだことで、壽は四王国で最も規律正しい「律国」と呼ばれるようになった。
 【壽】とは長き冬を耐え忍び、やがて来る春に幸多らんという願いを込めた国号。

水富む都 【斉-サイ】
 三方を高い山に囲まれた広大な盆地を領土とする国。
 豊潤な水源である浬鳴湖を始め、数多の水脈が国内を潤し、その象徴とも言える梁江へと流れ込む。温暖湿潤な気候を有し、農耕が盛ん。また、河や海を利用した各国との貿易の中心国でもある為、商業が最も闊達に行われている国でもある。特に梁江の中腹に位置する王都は四王国の中で最大の広さと華やかさを誇る。
 商業王国故に様々な人々が入り混じるため、比較的法は緩やか。莫大な建設費をかけて建立した王宮は都の象徴である。また、美術や音楽などの文化的発展にも力を注いでおり、王都には様々な芝居小屋や舞台が立ち並ぶ。
 【斉】とは古の伝承で国の全ての水脈を司っていたとされる水神の守護の意を込めた国号。

桜花の秘境 【淋-リン】
 霧に閉ざされた標高の高い山岳地帯を領土とする国。
 四王国の中で最も高い場所にある国であり、人口も最も少ない。各国からの入国も山越えしか手段が無く、大変困難な道程為、独自の文化が発達している。ほとんどの国民は遊牧と僅かな農耕を生業として暮らしているが、織物や細工物などの技術力は高い。特に藍木を使った染物は淋の国でしか作れない特産品である。
 岩盤が連なる山肌を切り出し、石造りの家を連ねて都とし、最も天に近い王宮と呼ばれている。また、国が霧に閉ざされ華やかさの少ないことを憂えた第五代国王・淋淑章により、国中で弥生に咲くことになった「桜花」を国花として定めている。その桜花が咲く時期に行われる「春祭」は大変な賑わいをみせる。
 【淋】とはかつて他国を終われこの地へ向かうしかなかった全民の祖先である淋一族を称えた国号。

火の国 【鳳-ホウ】
 火山と灰と温泉と鉱脈に恵まれた大地を領土とする国。
 最も南方に位置し、気候は温暖というより暑い。数多の火山とその灰が降り積もった地に作物を作り、人々は暮らしている。しかし、人々を豊かにしているのは農耕ではなく、主に鉱脈から発掘される天然資源の類である。特に鉄鉱石や黄銅鉱、輝石の類が多く産出される。これらは自国は勿論、他国へも貴重な資源として取り扱われている。
 火の国である鳳の王都は勿論、巨大な火山の麓に広がる広大な平野にある。火山は活動を停止して久しいが、「焔の山」と敬われ、王が毎年山へ拝礼することで威厳と権威を保っている。また、鉱石の発掘が盛んなこの国では、王宮の細工のほとんどが眩いばかりの黄金で作られているのも特徴の一つである。
 【鳳】とは焔の山に住まうとされる炎の鳥を国の象徴として崇め奉った国号。

人知未踏の聖域 【不越連山-フエツレンザン】
 淋の国の更に北に位置する雲海に覆われた山々。古来より神々が住まうとされ、人間は足を踏み入れることを許されていない。何処までも続く山々の一つには玉帝黄龍が住まう「玉山」や霊峰「蓬莱山」があるとされている。

航路なき海 【黄海-コウカイ】
 壽、斉、鳳の三つの国の東方及びに南方が面する海。浅い海が数里続き、良い漁場となっている。近海ならば船出に何の問題もないが、ある一定の距離より先には進むと、二度と陸地に帰ってくることは出来ないと言われている。実際に斉の国の商人が十数隻からなる船団を率いて出立したことがあったが、数百年経った今も帰還する気配はない。

事の章

畏怖すべき隣人 【妖-アヤカシ】
 人とも獣とも違う存在。自然と同一であり、異質な存在でもある。その種類は様々で、無害な小妖から、人並みの知識と不可思議な術を扱う大妖まで幅広い。また、妖の中には年月を積み重ねて神仙へと昇仙する者もいるが、反対に年月を重ねた故に凶悪化し、人を喰らう邪妖として恐れられるものもいる。しかし、このような分類はあくまで人の手によるものであり、小妖も力をつければ大妖となり、邪妖が改心すれば大妖となり、妖たち個体の変動は多々ある。
 ―【小妖-ショウアヤカシ】
 妖の中でも、主に自然的に発生した存在で、人間と意思疎通出来ないものを言う。「本ノ蟲」や「木霊」などが代表的な例で、比較的無害。存在が希薄で、普通の人にはほとんど彼らを視認することができないが、鳴き声や影程度なら感知することが出来る。
 ―【大妖-オオアヤカシ】
 妖の中でも、数百年以上の年月を積み重ね、人並み以上の叡智を得たもの。人間の前にはあまり姿を現さず、貴重で尊い存在とされる。土地に付き、守護神のような役割を持つこともあり、稀に人々に予言や知識を授けるものもいるという。「麒麟」や「夜刀神」、「天狐」などが知られる。
 ―【邪妖-ジャヨウ】
 大妖は無闇に人を襲わず、主に月光を浴びたり、土地に付くことによって力を得る。しかし、邪妖は人間を殺し、その肉を喰らうことで力を得る。基本的に人間を食う方が力を得るのに手っ取り早い為と言われているが、単純に人間を憎む妖が報復の意味を込めて、人を襲い始めることもある。特に「四凶」と呼ばれる「窮奇(きゅうき)」「渾沌(こんとん)」「饕餮(とうてつ)」「滅鬼(めっき)」の四種族は各地で大いに恐れられている。

雲上の異形 【神仙-シンセン】
 人や人ならざるものが何らかの要因により、神格化した姿。あらゆる面において人より優れている為、神と称す。基本的に不老不死で、聖域とされる山に住む。人と接触することは滅多に無く、両者は同じ大地に住みながらも、完全な住み分けを求め、また実行している。神仙を取りまとめるのは大地そのものである龍―玉帝黄龍であるとされている。
 ―【仙術-センジュツ】
 神仙が扱う術のこと。自然の理を己の望むままに操り、活用する。術の威力や内容には個人差があるが、一山一洞を持つぐらいになれば、炎を出現させたり、大地を隆起させたり等は容易い。ちなみに妖が扱えば「妖術」となり、内容的にあまり差は無い。

知識の集結 【道協会-ドウキョウカイ】
 自然の理に従い、人でありながら人ならざる術を極めたものたちによる集団。道術は秘術であり、その門下生以外には伝授されることはない。妖やらいなど特殊な技術を持っている為、人々から尊敬されたり、畏怖されたりしている。四王国の全てに様々な宗派が存在しているが、淋の国の奥地にある「沙弥門会」が最大にして最高峰の一門として名高い。
 ―【道士-ドウシ】
 道術の一門に属する人のこと。基本的に山門で修行に明け暮れているものが多いが、「修行」と称して国内をふらふらしているものもいる。


07/11/30

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