ibaraboshi***

home > 小説 > , , , > 「暗夜戀心中」後記

「暗夜戀心中」後記

「暗夜戀心中」完結までお付き合いいただきましてありがとうございます!
普段完結した作品は後日談として短編をアップしていくことが多いのですが(今回もそうする予定ではありますが)、諸々語り足りないところもあるので後記という形で特に重要でもない小ネタを出していこうと思います。

※最終話までのネタバレを含みますので未読の方は注意です!※


■環の着物
環の感情について本文中ほとんど言及していないのですが、代わりに彼の考えていることを着物の柄で表現しています。

第三話
 枝垂れ柳に蝙蝠。出会いを祝し、これよりの招福を蝙蝠で表す。
第四話
 黒地に芒(尾花)。尾神の名を持つ貴方を歓迎、また尊重するの意図。衣替え済。
第六話
 濃紫に柘榴。時満ちて結実す。柘榴は異界の食物で口にすれば戻れぬことを意味する。
第七話
 白銀に天舞う鶴。言わずと知れた白無垢。(白無垢は無地か鶴柄が一般的)

…これ今の今までは着物で思いを伝えるなんて雅!可愛い!と思っていたのですが、これは…可愛いじゃなくて怖いだな…無言の威圧感尋常じゃない。

■タイトル
各話のサブタイトルは吉原に因んだ名称になっています。現代ではあまり馴染みのない言葉もありますので、本来の意味を簡単に説明していきます。気になった方は各種参考書籍を開いてみてくださいね(吉原文化おもしろいよ!)

首尾の松
 吉原へは通うには隅田川沿いに築かれた堤防(日本堤)を必ず通らなければならず、その堤沿いに立っていたのが首尾の松です。日本堤の端に位置し吉原帰りの男たちが廓での「首尾」を松の木の下で報告し合ったことから首尾の松と呼ばれるようになったとか。
引手茶屋
 本文中でも記載していますが、吉原では大見世に登楼する際は必ず引手茶屋を通さなければいけませんでした。言わば遊郭と妓楼の仲介人であって、相方探しから支払いまで両者の間に入って様々な世話を焼きました。
初会
 女郎と客が初めて会うこと。本来は遣り手を挟んで盃を交し擬似的な夫婦の関係を結びます。
裏を返す
 女郎と二度目に会うことを裏、裏を返すといいます。これは客が女郎を気に入り、馴染みになりましょうと返答していることも意味します。
馴染み
 三度目の逢瀬。客と女郎は馴染みとなり、以降客は他の妓楼で女郎を買うことも許されません。
心中
 浄瑠璃や歌舞伎の題材にも多く取り上げられている女郎と男の悲恋の心中物語。基本的に金で縛られた籠の鳥である女郎にとって惚れた相手と一緒になるには来世へ望みをかけねばならぬほど過酷なことでした。

■二つの「おがみ」家
今回登場する「尾神」家は白狼神の末裔で真上神社の神職でもあります。狼を山の神とする信仰は人々が生きる場所を山から村、都市へ移していく過程で忘れられ、最早信仰は虫の息。狼へと変化する能力を持つ一族も一枚岩といかず、本家筋である静牙の母や姉たちの焦りはそういうところからも来ています。
また現代帝都の世界観においてはもう一つ「尾上」家が存在し、こちらは犬神に取り憑かれた人間を祖先とした一族で、尾神と同じく狼へと変化する能力を持ちながらもその本質は尾神とは全く異なります。
本来尾神と尾上は比べるべくもないのですが、現代では信仰よりも呪詛の方が人々の信心を得やすく、結果的に尾上の方が力を増しています。

■環のマヨイガ
源義経が没したとされる平泉の地をイメージしています。この辺は追々補完していく予定です。
環は本来関東から東北一円の狐をまとめる役目を担っています(ただしやる気があるとは言っていない)

■この国の狐たち
名前を持って人間と歴史に認識されている妖狐は三体います。元々土着の妖怪から神々の末席となったのは京の信太の森に住んでいた白狐、葛の葉と源義経の愛妾として一躍その名を馳せた玄狐、静御前(環)です。おそらく最も著名で強大である白面九尾こと玉藻御前は大陸由来の化生であって、そもそも狐の一族でもない(彼女の正体は千年狐狸精で狐や狸のような獣が千年経って変じた化け物のようなもの)ので本当は土着妖狐たちは一緒にされたくないのですが、なんとなく一緒にされている気がする…解せぬ…という感じです。

【参考書籍】
本作品および現代帝都作品を書くに辺り様々な書籍を参考にさせていただいています。中でも吉原に関しては下記の二冊が特に重宝していますので興味のある方は探してみてください。

『図説吉原事典』永井義男著
とてもわかりやすく初心者向け。図解や錦絵の説明もたくさんあり、一通り吉原について知ることができます。
『江戸吉原図聚』三谷一馬著
こちらはもっと史実に即した詳細な吉原について知りたい方向け。古文や錦絵を引用し、専門書らしい筆致ですが内容は項目ごと分類されてわかりやすいです。


2015.11.02

新しい記事
古い記事

return to page top