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老舗のカフェー「北の七ツ星」
 針葉樹の森に囲まれ、美しい紺碧の湖を抱く街トゥルータンにその老舗のカフェーはある。石畳の敷かれた坂の上、黒い看板には「北の七ツ星」と文字通り七つの星が金色に踊る。数百年の時を刻む大時計、古い樹を切り出した傷だらけのカウ […](更新日:2016月10月29日)
Treat,Treat,Treat!
 計る。粉をふるう。混ぜる。泡立てる。  カボチャはふかし、鮮やかな黄色の果肉を裏ごしする。立ち昇る白い湯気。卵黄、砂糖、バター、ほんの少しの塩。パイ生地に流し込んでオーブンへ。  茶葉を刻む小さな破裂音。注がれる乳のと […](更新日:2016月10月29日)
ナイトメア・サーカス
「レディース!アーンド!ジェントルメン!」  愉快な音楽はトランペットに打楽器を伴ってどこからともなく鳴り響き始め、七色のバルーンは空へ高く舞い上がり、紙吹雪は視界を埋め尽くすほどに降りしきる。けれども街の窓は固く閉ざさ […](更新日:2016月10月29日)
群青に溶けよ
 彼がこの世界で目覚めたとき、視界の中には女王ただ一人だけがいた。  仄暗い闇の中で彼女は灰色の瞳を見開き、屍のように横たわる男をじっと見つめていた。一方の男は未だ己の身に起こった事実が理解できず、鼻の奥に燻る血と白刃の […](更新日:2016月10月29日)
ティーカップに満月を
 月の輝く夜だった。  静かの森と呼ばれる静かな森にその家はあった。こじんまりとした造りは小屋と呼んでも差し支えはなさそうだったが、ドアに掛けられたミモザのリースに玄関までたった三段の階段を飾る鉢植えの花はよく手入れされ […](更新日:2016月10月29日)
そのシュガーキスは届かない
 丘とレモンの街、 アルマタリアに春がやってきた。  鮮やかな黄色の花を群れなして付けるミモザも満開となって彩りを添え、吹く風は馥郁たる新緑の香りを運ぶ。街はにわかに活気づき、長い冬の間に滞った澱を洗い流すかのように誰も […](更新日:2016月10月29日)
魔女は銀の弾丸を抱いて眠る
 「それ」は月のない夜に限られると決められていた。  いつから「そう」なったのか、アレクセイはすでに記憶していない。ただ霧が森の全てを覆い尽くす夜、薄い雲が空一面に広がりやがて重なり合って深い闇を呼び込む夜、湿気を含んだ […](更新日:2016月10月29日)
四色は世界に宿る
Ⅰ 夜は優しい夢を見る~草原のメフィストフェレス~  広大な草原にぽつりと落ちた白い点のような天幕が砂漠から吹く風を受けてはためく。南十字星の真下、草木で染め抜いた布を大地に広げ、その上に仰向けに転がったメフィストフェレ […](更新日:2016月10月29日)
BLUE BLUE OUT THE SKY
 乾いた風が頬を撫でる。辺り一面に広がる白亜の砂漠。時折、水晶が極小サイズまで砕け散ったような半透明な砂の欠片が風に巻き上げられ、きらきらと不気味に美しく輝く蜃気楼を作った。常に砂塵が宙を舞っているせいで、視界は非常に悪 […](更新日:2016月10月30日)
RED MOON FOR THE BLUE NIGHT
 アレクセイ・エーシス・アーガイドの記憶にある姉の姿は常に可憐であった。  比較的裕福な家庭に生まれた姉弟は客観的に見ても、かなり恵まれて育ったのだと思う。厳格で真面目な父は大手の貿易商を営み、国に古くから伝わる名門に生 […](更新日:2016月10月30日)
悪酔いのマーメイド・リキュール
 好天の上空は発色の良い絵の具を刷毛で塗りつけたかのような青色で、まるで綿毛そのものみたいな雲がぽかぽかとアトランダムな距離をとって配置されている。そよぐ風は裏手にある泉からほんの僅かな湿気を乗せて、くるりくるりと紫色の […](更新日:2016月10月30日)
さようならの世界
 男には物心ついたときから両親がいなかった。家族もまたいなかった。与えられた場所は古い孤児院の片隅で、まだ少年と呼ばれる彼は常に腹を空かせていた。当然だが与えられる愛情もなく、その小さな両手は温もりというものをを全くと言 […](更新日:2016月10月30日)
「WOE」掌編集
■それは美しき烈火のごとく 2015.09.21  ちりちりと首の裏が焼けるようにざわついている。頬を撫でる風は弱く、けれど迸る魔法の気配は指を爪を骨を痺れさせるほど鮮烈だった。  それは怒りだ。一片の悲しみさえ一端の憐 […](更新日:2017月1月13日)
GoodLuck Witches!
 下水の饐えた匂いが辺り一帯に漂っている。スモッグによって終ぞ日の光を通すことがなくなった曇天の下、轟音をたてて回り続ける巨大な換気扇にてらてらと虹色に光る液体が浮かんだ水たまり。むき出しになった配管の上を太った鼠が全速 […](更新日:2017月4月7日)
空を征く盾
 王都北西に位置する崖上の平原、通称飛翔広場は緊迫した空気に包まれていた。  生え揃ったばかりの柔らかい若草を踏み締めるのは鉄の靴底を備えた揃いのブーツ。これまた揃いの深緑色の衣装は柔らかく軽く、けれど獣の爪でも容易に切 […](更新日:2017月5月2日)
WOE 遠雷の心音
 ぷすぷすと焦げ臭い匂いが鼻の奥で燻っている。雷鳴は遠く曇天の彼方へと去りつつあるが、この雷霆の森にあった落雷は薄い白煙が昇る数を数えるだけで相当数であるということが推測された。  そして、運悪くそれらのうちの一条が空を […](更新日:2017月9月3日)

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