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その他

君と僕の記念すべきなんでもない夏だから
 夏休みを一週間後に控えた放課後の教室は浮ついた空気に満ちていた。  期末テストが終わった今、あとは補講と球技大会ぐらいしかこなすべきイベントはなく、それが終われば全校生徒が待ちに待ったと言っても過言ではない夏休みの到来 […](更新日:2016月10月30日)
祝福すべきは平々凡々たる僕らの日常
 夏だ。夏休みだ。学生にとって夏といえば夏休みであり、夏休みといえば夏といっても過言ではないくらい、愛すべき季節が今年もやってきた。  連日の猛暑を諸共せず部活動に励む者もいれば、涙ぐましい労働でお小遣いの底上げを狙う者 […](更新日:2016月10月30日)
スニーキングスネークアヘッド 前
 太陽は限りなく頂点に近い位置にあり、そよそよと吹く風は満開のアカシアの花を優しく揺らす。甘い匂いは緩やかに辺りを漂い、まるでそれと戯れるかのように一人の幼子がきゃっきゃっと笑い声をあげていた。辺りに人影はない。父親も母 […](更新日:2016月10月30日)
スニーキングスネークアヘッド 後
 思えば吠崎叶(ほえざきかなう)の人生には最初から不運という名の悪夢がまとわりついていた。  本来ならば吠崎家の祝福すべき初子は双子の兄妹のはずだった。しかし先に生まれ落ちた兄は心肺停止状態で程なくして死亡が確認され、叶 […](更新日:2016月10月30日)
篁愛玩動物店
 シャッターの閉まった店内は薄暗く、そして静かだった。所狭しと置かれた鉄檻の中には確かに獣の気配がする。しかし、闇に蠢き出すはずの獣たちは全く鳴き声をあげていない。ただ、そこに納まっているのは人形だとでも言わんばかりに不 […](更新日:2016月10月30日)
幸せにはなりたくない
「無駄なのに。」  それが彼女の口癖だった。いつも物憂げそうに、彼女は唇を開いてそう言った。囚われの彼女。囚われて、囚われて、指先と視線しか動かすことは出来ぬのに。身に迫る確実な死の予感に震え、涙を流し、命乞いをするなん […](更新日:2016月10月30日)
鳥籠の猫
 腐った吐息を吐き出す都会にオアシスなど在りはしない。それは澪川月読(みのかわつくよみ)の持論である。雑踏と二酸化炭素にまみれた路地を行く。どんよりとした曇天とスモッグが空を覆い隠し、コンクリートと空はまるで切り離されて […](更新日:2016月10月30日)
蝶が死んだ。
 蝶が死んだ。  黒と青の斑の蝶だ。硝子張りの室内で一匹だけで飼っていたから、特に子孫を次に残すということもしなかった。処女のまま死んだ柔い命をそっと掌で掬う。蝶が死ぬのを待っていたかのように、白い花を付けていた橘の木も […](更新日:2016月10月30日)
なんでもない掌編集
■青いサンダル 2016.08.21 ※ホラー番組ナレーション風のつもりで書きましたが特に怖くはないです。  これは私が高校生だったときのお話です。  当時、私は文芸部に所属していました。活動内容は文化系部活動の最たると […](更新日:2017月1月13日)
その他 ウカノミタマさまの言うとーり。
 穂村誉(ほむら ほまれ)が新入社員時代から慣れ親しんだアパートを離れ、勤務先からは五駅遠ざかることになる閑静な住宅街の新築マンションに引っ越したのは秋の夜長も極まる十月も半ばのことだった。  とりたてて記すような深い理 […](更新日:2017月9月30日)
その他 碧の蛇王0
ラクルカント王国 - Kingdom of the Lacrcant -    西方をアリーティア海に面し、その他三方を果ても見えぬ砂漠に囲まれた王国。  国土のほとんどは荒涼とした荒野と白亜の砂漠だが、キリーヒ湖をはじ […](更新日:2017月10月22日)
その他 碧の蛇王1
 熱く乾いた風が吹き続ける乾季も半ばを過ぎた頃だった。  今年はもうないだろう、と神官たちが胸を撫で下ろした頃合いを見計らったかのようにそれはやって来た。青く澄み渡る空の向こう、一筋の灰色の雲がむくりと鎌首をもたげたかと […](更新日:2017月10月22日)
その他 碧の蛇王2
「我が名はラフィーガ。本来の名は伝統と威厳に溢れるそれはそれは美麗なものだが、いささか人間には発声しにくいのでな」  これならおぬしも呼びやすかろう。  そう続けた神は開口一番文句を言った割に友好的だった。  半人半蛇な […](更新日:2017月10月28日)
その他 碧の蛇王3
 その日、メドゥの元に眠りを運ぶ精霊はなかなかやって来なかった。  枕が変わったのもあるだろうし、何より昨日まで身を埋めていた狭くて固い箱とは雲泥の差の寝床がちっとも落ち着かない。神様の奉仕役になったからといって、メドゥ […](更新日:2017月11月3日)
その他 碧の蛇王4
 一番鶏が鳴く。高窓から差し込む光は床の上に美しい薄紅色の模様を描き、開いたばかりの瞳に触れる空気は清冽だった。 「………」  背後から聞こえてくる寝息は穏やかで目覚める気配は微塵もなく、あれほど頑なに拘束していた腕もど […](更新日:2017月11月11日)
その他 碧の蛇王5
 こうしてメドゥの予想とは少し異なる蛇神様との生活は幕を開けた。  ラフィーガ、と自ら名乗った神様は逸話通り神として相応しい要素を確かに持ってはいたけれど、基本的には気まぐれで知識欲旺盛で、総括すると幼くして聡明な子供の […](更新日:2017月11月18日)
その他 碧の蛇王6
 乾季とは雨が降らぬ季節のことを言う。だから、天を焼くほどの苛烈な太陽の光は当たり前で、カラカラに乾いた大地のひび割れも当然で、井戸の水位が下がるのもいつものことであるというのに。どうしてもメドゥは不安を拭いきれない。今 […](更新日:2017月11月25日)
その他 碧の蛇王7
 ラクルカント王国辺境の地、第七神殿周辺には相変わらず雨が降らなかった。まだ井戸は干上がらないし、噴水は絶え間なく水を撒き散らしているし、ナツメヤシも枯れていない。巡回するキャラバンによれば周辺のオアシスも豊かに水を湛え […](更新日:2017月11月26日)
その他 碧の蛇王8
「今なんと?」  正直に言ってしまえば、そのときメドゥが最も気にしていたのは果たしてこの胸の内の動揺が外に漏れてしまってはいないかということだった。  メドゥにとって感情を露わにしないことは重要な処世術の一つだった。たと […](更新日:2017月12月2日)
その他 碧の蛇王9
 結局、あれから神官長をはじめとした何某からメドゥへのお咎めが来ることは一切なかった。  他ならぬ神自身が奉仕役を連れ帰ったのだ。その意には背けぬと思ったのか、はたまたこれ以上神様のご機嫌を損ねるにはあまりにも不利益と悟 […](更新日:2017月12月2日)
その他 碧の蛇王10
 翌朝、目が覚めたメドゥは一人だった。  しばらく思考が追い付かないまま、ぼんやりと腹の辺りを掻く。霞んだ目をぐるりと一周しても布の海の中に異形の神はいなかった。あんなに寝汚い男が一体どうしたというのだろう。高い位置にあ […](更新日:2017月12月2日)
その他 碧の蛇王11
 白亜の宮殿を背景に鳥が囀り、冷たい水をなみなみと湛えた池には無数の蓮が薄紅色の花を開く。花の香りは穏やかに吹く風にのって広がり、極彩色の蝶や蜂を優しく誘う。どこからともなく聞こえてくるのは弦を弾いて作る天上の音楽。そこ […](更新日:2017月12月2日)
その他 青年ギロチンと少女アイアン・メイデンの平凡な日々
 ジャッジメントシティの空は常にどんよりと曇っている。  否、常に、とは言い過ぎた。  週に一度ならず二度、薄雲をささやかに切り裂いて仄かな陽光が蜜色の石畳や赤いアパートメントの屋根や灰まみれの掃除屋たちが顔を覗かせる煙 […](更新日:2018月3月6日)
その他 チョコレートドラゴンと砂糖菓子の妖精
 とある世界、とある時。砂糖菓子の妖精たちの間でまことしやかに囁かれるおとぎ話がございました。曰く、ガナシュの森に住むというとびっきりのチョコレートドラゴンと「つがい」になることが出来たなら。その幸運な妖精はそれはそれは […](更新日:2018月3月6日)
その他 ソルトゼリーフィッシュと氷の人魚
 とある世界、とある時。北極に程近い冷たい海に一頭の人魚がおりました。  グレーズのような白銀の髪、ソーダアイスのような薄青の瞳、そしてよく練り込まれた飴のようにきらめく唯一無二の緑青の鱗。美しい人魚は誰もが羨む容姿を持 […](更新日:2018月4月10日)
その他 夢見る調達士とティラミス・ケンタウロス
 この世界のすべての生き物はお菓子でできている。  だから当然お菓子でありながらお菓子の原料になる生き物もいて、それらを捕獲し、製菓職人に引き渡す調達士は公然たる職業として成り立っていた。  彼らが調達「屋」ではなく、敬 […](更新日:2018月4月10日)
その他 糖蜜コウモリと珈琲の魔女
「オヤ、なんだってこんな薄汚い」  それはただのぼろ布のように見えた。ところどころはげた毛並みは、汚泥にまみれ、ごみを巻き込み、真っ黒に汚れた上によくない臭いもしていた。しかし、女は事もなげにそれをつまみあげると、しげし […](更新日:2018月10月31日)

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