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超短篇 第166回「風えらび」


500文字の心臓」参加作品。第166回「風えらび」。



 大陸の端にある村には強い風が吹く。
 村で唯一の農作物はたわわに実る小麦。農家には必ず風車が一基、備えられている。
 風車がよく回るかは、その家の娘の器量による。
 一際強い西風の神の息子たちは面食いなのだ。軽薄な笑い声を伴って村中を吹き荒れ、特に気に入った娘のいる家の風車を戯れによく回す。彼らが好むのは棒きれのような肢体に細く長い金色の髪、まん丸な緑色の目。
 だから、アンヌの家の風車はそれほど回らない。
 どうしてもっと器量よしに生んでくれなかったの、と両親を問い詰めてもなんの意味もないことはもうわかっている。
 来る日も来る日も足りない風を補うためにアンヌは風車を回す。掌の皮膚は厚くなり、肩はがっちりと肉付き、より一層神に好まれる娘からは遠ざかる。しかし、それでもいいのだ。神の風が回しても、アンヌの腕が回しても、麦は挽けて、粉になり、パンになる。
 やがて大きな雷が落ちて、人と神は仲違いした。
 神の息子たちはとんと村を訪れなくなり、風はやんだ。村人は嘆き、悲しみ、大量の収穫を前に途方に暮れた。
 アンヌの家の風車だけが今日も変わらず回っている。


※逆選王ありがとうございました!!

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