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FGO サンぐだ♀長編

 書きたいんだよ…!!またじっくり考えて手を付けたいと思います。とりあえず「パリの断頭台」読みます。
 (仮)がたくさん付いてますが、続きから序章っぽいやつです。マスター名前あり(藤間朱花)です。




 空は厚い灰色の雲に覆われて光の一筋も見えてはこない。
 広大な広場を取り囲んだ煉瓦造りに赤い屋根と煙突が付いた建物は集合住宅なのだろうか。どの窓も大っぴらに広げられ、見物人と思しき人々が鈴なりに群がっていた。無論、窓だけには限らない。ルイ十五世の騎馬像やたくさんの天使が羽を休める噴水を除き、どんな場所にも人がいた。男も女も老人も子供さえもいた。無数の人々がざわざわと決して喧しくなく、けれどとても静寂とはいえない具合に囁きあい、その合間を縫うように物売りが忙しげに動き回っている。ワイン、パン、チーズ、リンゴ。静かな熱狂に包まれた群衆にそれらはよく売れていた。わずかなコインによってやり取りされる軽食は庶民の娯楽だった。否、もっと正確に言えばこれから行われる「儀式」こそが民衆にとって大いに残酷で興味深い見世物だった。
 広場の中央に据えられた木製の土台。櫓のように組まれた台に屋根などはなく、その上には更に巨大な建造物が据え置かれていた。縦に長い長方形の木枠は下部に丸くくり抜かれた木板、上部には縄で固定された巨大な刃を備えている。刃そのものが斜めに加工されているのは、どんな「首」であろうとも均一に強い力を加え、速やかに苦しみなく切り落とすためだった。そう、これは苦痛なき究極の刑罰。神の名においてその罪を人から切り離し、安らかに死出の旅路へと導く、人道に基づいた刑具。そのはずだった。そうなる、はずだったのに。
 どうして、こうなってしまったんだろうか。
 その答えをどうしても出せないまま、藤間朱花はただ促されるままに断頭台への階段登る。刑の執行がある度に組み立てられるそれは朱花の片足分の重さだけでぎしぎしと苦しそうに軋んだ。足を運ぶほどに目線は高くなるけれど、視界に飛び込んでくるのは鈍く光るギロチンだけだった。数多の人間の血を吸った刃は以前の死刑執行などなかったかのように、一つの肉片も残さず清められ、一滴の血糊も見逃さず磨かれて、あたかも新品であるかのようにそこにあった。
 ああ、よかった。
 きっとあれは過たず朱花の首を切り落とすだろう。朱花の罪を朱花自身から切り離し、天へと続く道行きを安らかなものにしてくれるに違いない。つまり、あの忌まわしい-忌まわしい、なんだ?
 朱花の罪とはなんなのだろう。一体朱花はなんの罪を犯し、なんの罰を受けるのだというのだろうか。
 自覚した瞬間に足が止まる。朱花の手に縄をかけ、先導して歩いていた処刑人たちが訝しげな顔をする。「私の目線」は、ギロチンの最も近くに立っていた男に移動した。彼はこの場で最も権威ある人物であるようにその目には映った。上等な生地を使った外套に羽根飾りの付いた帽子をかぶり、帯刀までしている。その顔がゆっくりとこちらを向いた。曇天に抱かれる新雪のような白銀の髪、青く澄んだ湖水色をした鋭利な瞳。長身で如何にもスマートなこの男が死刑執行人だった。間違いない。だって朱花はその名前を知っている。彼は、私の、

「サンソン!」

 いつだってそこで目が覚めた。後味の悪い夢、のっぺりと頭の奥に張り付くような悪夢。それがただの夢ならばよかった。たった一度、目覚めてしまえば、内容さえ朧げになってしまうような、そんな些細な夢ならば、朱花もきっといつしか忘れてしまったに違いない。でもきっとそんなことはあり得ない。その夢は夜毎朱花の元へとやって来た。寄り添うように、さめざめと泣くように。だから、朱花は確信する。今日もきっとどこかで。

「貴方が泣いている気がする」


天国への階段
~シャルル=アンリ・サンソンと彼女の邂逅~


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