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刀剣乱舞 キミがタメ(物吉貞宗、後藤藤四郎)

※妄想です※


「物吉、頼んだ」
「はい!みなさんに幸運を!」
 江戸城調査任務が下った本丸では連日調査部隊の派遣が続いていた。中でも必ず部隊長を命じられるのは物吉貞宗。無銘刀ながら携えて戦に出れば負けを知らぬとの逸話から徳川家康公に寵愛された貞宗派の脇差だ。物腰は穏やかで、華奢な体躯、緩くうねった蜂蜜色の髪に同色の瞳。柔らかい花弁を持つ花が綻ぶが如くの笑みは嫋やかなれど、戦場に立てば刀の矜持を忘れぬ横顔を見せる。
 そんな彼が此度の任の部隊長に指名される理由はただ一つ。それは彼が持つ「幸運の刀」という肩書きをおいて他にない。即ち物吉貞宗が選ぶルートに不要な敵はなく、ことごとく宝箱を見つけ、必要最低限の距離で脱出ゲートへと辿り着く。ゆえに部隊は最高の効率で最大の結果を得ることができていた。道中も危険を察知した場合は物吉がいち早く伝令を行うため、奇襲を受ける心配もなく、部隊はどちらかというとのんびりとしている。主も通常ならあまり機会のない部隊構成や戦術を実験的に試そうと考えているのだろう。普段は同じ粟田口派の短刀とともに夜戦へと出陣することの多い後藤藤四郎が珍しく物吉貞宗と同じ部隊なのもそういった理由があってのことだった。
 江戸城に潜入してから早一刻。道筋はそろそろ中盤に差し掛かろうかというところらしい。部隊の先頭に立ち、なんの迷いもなく歩を進める物吉の隣に並び立てば、相変わらずのにこやかな笑みが後藤を出迎えた。
「すげーよなお前」
 何かしら向こうから声をかけてこようとしたのを先制して遮ると、開きかけた口がぽかんと開く。そのまま首を傾げた物吉はなんのことかと真剣にわからないようだったが、後藤が幸運の刀ってやつ、と言い添えるとようやく察したのか、ああと緩く笑ってみせた。果たしてその笑みはいつものように穏やかなものに後藤には見えたのだけれど、しばらくすると彼はそれをどこか困ったように変えて、躊躇いがちにこう続けた。
「でも、どこの本丸のボクもこうではないと思いますよ?」
 虚を突かれ、後藤は思わず意味のない母音で聞き返してしまう。一方、物吉はその反応が予想の範疇だったのか、あくまで進軍の速度を緩めないまま、けれど常にない饒舌で語りだす。
「この幸運を呼ぶボクはあくまで主様の認識の元で成り立ってるというか…確かに元々ボクは幸運の刀なんて呼ばれてましたけど、それは語り継がれた逸話であって、もっと言えば偶然とかそうあって欲しいという願望であって、『真実そうであるか』なんて確かめようもないじゃないですか。でも今のボクの主様は愚直に、いえ極めて純粋にそれを信じてくださっている。だからボクはそれに相応しい幸運の刀であることを望み、ゆえにボクは幸運の刀として存在し得るんです。とはいえ、鶏が先か卵が先かって話にはなってきちゃうんですけど……」
 おそらく頭上に大量に飛ばした疑問符が見えたのだろう。ちょっと難しかったですかね?と気遣うように言った物吉にむっとする。確かに話の内容はよく理解できたとは言い難いが、要するには。
「つまりそれって大将が物吉のこと信頼して、期待してるってことだろ?」
「え?」
「だったら胸張ってればいいだけだろ。お前は大将の大切な刀で、お前はそれに相応しく立派に刀やる。それでいーじゃん」
「……キミって本当に…」
 何かを言いかけた物吉は言葉を途中で飲み込む代わりにふふっと喉の奥で笑ってみせた。それが決して嫌な感じがしなかったものだったから、後藤もつい言葉を見失ってしまう。
 物吉貞宗。幸運を運ぶ刀。眩いばかりの純白の同胞は光の下、晴れやかに笑ってみせた。
「確かに、後藤くんの言う通りですね!」


2017.04.02

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