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刀剣乱舞 晴れがましくハレて本日(信濃藤四郎、薬研藤四郎、厚藤四郎、後藤藤四郎)

 睦月が朔日。一年に一度のハレの日、明け六つ過ぎ。
 本丸の大広間には続々と身支度を整えた刀剣たちが集まり始めていた。大晦日に羽目を外しすぎたのか欠伸を噛み殺す者もいれば、早々に眠りに就いたのか晴れやかに朝を迎えている者もいる。信濃藤四郎はといえば遠くから鳴り響く除夜の鐘の幾つ目まで聞いていたのかまるで記憶にない。気が付けば布団の中で兄弟たちの寝息に囲まれて朝を迎えていた。同室の兄弟刀、薬研藤四郎、厚藤四郎、後藤藤四郎も信濃と似たような年越しをしたのだろう。皆特に眠たげな顔をすることもなく、すっきりとした表情でお膳台へと向かっていた。
 元旦の献立は鰹出汁の吸い物に青菜や蒲鉾、餅を入れたお雑煮、山梔子の色も鮮やかな栗きんとん、つややかに煮込まれた黒豆に鰹節のかかった数の子。お屠蘇の朱塗りも鮮やかにまさに正月といった雰囲気を前に、俺常々不思議だったんだけど、と信濃藤四郎は素朴な疑問を口にした。
「日が変わって、月が変わっただけでしょ?なんでそんなに人間は有り難がるのかな?」
「そりゃ…そういうもんだろ」
「師走から睦月へ変わるのは一年に一度だけだぜ」
 そうざっくりとした見解を寄越したのは後藤と厚。信濃が納得いかずに眉根を寄せるとそのやり取りを黙って聞いていた薬研が横から口を挟んだ。
「まあ、簡単に言えば区切りだろうな」
「区切り?」
「人間は百年も生きられんからな。一年という単位で人生を区切るのがちょうどいいんだろう」
「ふーん」
 わかったようなわからないような答えに信濃が生返事をすると、薬研が喉の奥で笑ってみせる。
「それにハレの日はたまにあるからいいもんだ」
「俺たちにとっては一年前なんて昨日だよ」
「人間にとっては、だ、兄弟。俺たちはいつだって老い先短い人間と過ごしてるだろ?」
 薬研の言葉がちょうど途切れた頃、広間へと主がやって来た。刀剣たちに口々に声をかけられ、それに答えながら自身の席に腰を下ろした彼女はあからさまに眠たそうだ。黒いまなこがゆらゆらと揺れ、何度か膳の上をすべったあとに、おやと見開かれる。その口が元旦かと動くのを確かに信濃は見ていた。それは信濃同様、主の動向を注視していた兄弟も同じだったのだろう。嫌味のない苦笑が次々に両脇から漏れる。
「…大将、正月ってこと忘れてたな…」
「昨日年越し蕎麦も食ったってのになあ」
「まあ、うちの大将はああいう御人だよな」
「大将!おはよー!」
 今日はお正月だよ!という信濃の声に照れたように微かに笑った彼女は返事の代わりにひらひらと手を振り返してくれた。
 いつの間にか広間にはずらりと彼女の刀たちが勢揃いしていた。刀派も刀種も年代も違う。だが皆等しく彼女の手によって顕現し、彼女の指揮によって戦う同じ本丸の同志たちは耳を澄まして主の声を待つ。その一振り一振りの顔をじっくりと見回し、やがて彼女の涼やかな声が抜けるような冬晴れの朝、晴れやかに降り注いだ。


「#大将組版深夜の創作60分一本勝負」参加作品
お題「正月」
瓜野(@u_butterfly_o)


2017.01.01

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