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刀剣乱舞 タカラモノハッケン!(信濃藤四郎、後藤藤四郎、薬研藤四郎、厚藤四郎)

 いよいよ年の暮れも迫った師走のある日のこと。
 朝餉のあとに告知された通り、今日は朝から刀剣男士たちによる本丸中の大掃除が行われていた。障子という障子を開け放し、押し入れを整理して欄間の埃をはたき、床はかたく絞った雑巾で拭く。特に彼らが寝泊まりする二階建て家屋は常にない賑やかさに満ちていた。基本的に寝るための場所であるがゆえに普段昼間はほとんどひと気のない建物だ。それが今日は長期遠征に出ている少数を除いて、皆が各々使用している部屋の掃除に勤しんでいる。そしてそれは勿論二階東側にずらりと並んだ粟田口派の自室の一つ、薬研藤四郎、厚藤四郎、後藤藤四郎、信濃藤四郎の合部屋においても例外ではない。
「何これ?」
 四人が共同で使っている押し入れに見慣れないものを見つけたのは、はたきを手にした信濃だった。暗がりから取り出してみると鮮やかな和紙の色合いが踊るそれは千代紙を丁寧に貼り付けた掌にのるぐらいの小さな箱。信濃の声に薬研と厚も掃除の手を止め、手元を覗き込んでくる。しかし、首を傾げる様子を見る限り二人とも見覚えはないようだった。
「誰も知らないってことは…」
「後藤のか?」
「なんか入ってる」
 軽く左右に振ると紙の壁に何かが当たる微かな音がする。信濃が躊躇なくそれを開けるのを静止するだけのスピードは薬研と厚にはなかった。呆気なくふたを取り払われた箱の中にはどこかで見たことがあるような丸い缶が一つ。やはりそれも開けてみれば中身はきれいさっぱりなく、どうやら後藤藤四郎が後生大事に取っておいたのはただの空き缶のようだった。
 両脇の兄弟二人がなんだこりゃとでも言いたげな訝し気な顔をする。そんな中、自身の記憶を隅々まで探っていた信濃はようやく思い当たる節に辿り着いて思わずあっと声をあげた。
「これ大将が使ってたハンドクリームの缶だ…」
「ああ…あれか」
「いっとき大将に塗って欲しくて皆並んだやつな」
 冬の寒さが身に染みるようになった折、とあることから主自らの手によって手荒れ用の軟膏を塗ってもらうことが本丸中で流行ったことがあったのだ。そのときの発端となったのが、何を隠そう彼らの兄弟たる後藤藤四郎だった。だから、後藤がこの缶を持っているのは別段不思議なことじゃない。きっと兄弟の与り知らぬところで彼と主との間で交わしたやり取りがあったのだろう。その内容まではさすがに推測することは難しいけれど、でも、おそらく。
「あーっ!!」
 大きな声に振り返ればそこには水桶を携えた後藤が震える指先でこちらを、正確には信濃が手にした小箱と空き缶を指している所だった。急いで桶を床に降ろした彼は駆け寄ってくると、やや乱暴に箱と缶をひったくる。見られまいとすぐさま缶を箱に戻しても、もう充分見てしまったあとなのだから遅いと思うのだけれど、きっとそういう問題ではないのだろう。しかし、そうとわかってはいても、耳まで真っ赤にして蹲る後藤の後ろ姿に信濃はつい率直な言葉を投げてしまう。
「後藤って意外と乙女…」
「ああ!?」
「気持ちはわかるぜ、後藤。大将からの貰いもんだもんな!」
「まあ雅ってやつだとは思うぜ」
 厚には何か悟ったように頷かれ、薬研には大層適当な感想を述べられ。反論の気力を根こそぎ奪われたらしい後藤は泣きそうな顔で兄弟を順々に見回すと、やがて真っ赤な顔を膝頭にうずめてぐすぐすと唸りだす。
「まず勝手に開けたこと謝れよぉ…」
 お前ら嫌い…ととうとう泣き言まで出始めた彼に慌てて信濃をはじめとした兄弟が謝罪したのは言うまでもなかった。



「#大将組版深夜の創作60分一本勝負」参加作品
お題「大掃除」
瓜野(@u_butterfly_o)


このお話のちょっとした前日譚「春待てど春あり」(女審神者います)


2016.12.28

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