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刀剣乱舞 春来いと鶴が鳴くなり梅の花(鶴丸国永、三日月宗近、審神者)

※ つる→いち前提で鶴と三日月と審神者のお喋り ※


「一期一振をからかうと鶴丸がうるさい」
「なるほど。悋気というやつか」
 主が少々口を尖らせて言った台詞に当たり前のように三日月宗近が答える。一瞬、何を言っているのか言われているのか理解できなかった。ぽかんと口を開け、端からは大層間抜けに見えたであろう鶴丸国永はしばらくかかってようやく思考が回り始める。それは、つまりそういうことだ。
「はああ!?誰が焼き餅焼っ…うわ!?」
 二人が腰を下ろした縁側に勇んで駆け寄ろうとし、鶴丸の下駄は勢いよく張り出した松の根に躓いた。持ち前の身軽さで顔面から地面へと直撃することはなんとか避けたものの、なぜか無様に転がった鶴を女の黒いまなこと月を浮かべた刀の瞳がこれ以上ないほどに愛おしそうに見下ろしていた。
「お医者様でも草津の湯でも」
「治せぬ病はなんとやら、だな。春だなあ、主よ」
「満開なのはまだ梅だがな」
「なるほど、桜の開花までは今しばらくかかるということか」
 主はうまいことを言う、と機嫌が良さそうに三日月が笑えば、主も満更でもなさそうに口元を緩める。普段から概ね仲睦まじく、戦場においては目を見張るほどの連携を見せる主従であるが、こんなところでその絆を見せつけられたくはなかった。どちらか一人ならともかく二人がかりなんて卑怯だ。
「き、君たちなぁ…!」
 しかし、二つの顔を交互に見つめたまま、はくはくと口を開いたり閉じたりするしかできない刀に説得力など何もない。主は意に介した風なくのんびりと茶を啜り、三日月は優美な動きで袖をさばいて黒文字を取る。奇しくも今日の八つどきの菓子は梅を模した練り切りだった。薄紅の中央にちょんと乗った雛鳥のような黄色が可愛らしい。派手さはないが、しとやかに香る梅がごとく。恋の始まりとは言い得て妙か。
「咲くとよいな」
「咲かずとも骨ぐらいは拾おう」
「……あのな」
 怒る気力も失せて、鶴丸は肩を落とす。両者どこまでも己を貫く一人と一振りに何を言っても無駄だった。
 立ち上がり、白い着物に付いた土埃を払えば、早春の乾いた風がすぐさまさらう。晴れた空の色はどこまでも澄み切った青で、その色は否が応にもかの人を思わせた。恐るべし感情は病と称されるだけのことはある。
 これではまるで人間のようだ。呟けば人の子ではなく、美しい鋼の方が喉の奥で笑ったようだった。


2016.12.11

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