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刀剣乱舞 カガチノメザメ(大蛇審神者姉妹)

 空気が変わった。
 肌を刺すような殺気が目の前に仁王立ちする二人の主から発せられていることは明確で、吹き付ける生臭い風を浴びてなおその姿は鮮やかな怒りに彩られているように見えた。立ち塞がるは歴史修正主義者の隊列でもなく、最近介入を始めた検非違使なる者たちでもなかった。けれど、彼女らに未知の何かを恐れる気配は微塵もない。むしろ未知なる何かと刃を交えることを喜ぶような、一種の高揚感さえ感じられた。
 地に崩れ落ちたほかの刀剣男士たちも半ば呆然とした表情で彼女らの背中を見つめていた。見つめていることしかできなかった。風に煽られる黒い髪、ジャケットの裾、腰に添えられた手、不敵な笑みを浮かべる横顔。
 笑み。それは慢心から、ましてや絶望から来るものでは決してなかった。彼女らの脳内では今正に凄まじいスピードで目の前の敵に対する分析と戦略が練り上げられ、その指示が信じられないスピードで全身を駆け巡っているのだ。手に取るようにわかるそれを簡単に「戦意」と言ってしまうのも憚られる。立ち昇る殺気に凝縮された鋭利な闘争心。それは審神者としても、隊を率いる将としても相応しくない。
 そこにいるのは、人ならざる異形。
「好き勝手にまあやってくれたじゃねえか」
「同じ物の怪どうし仲良くと言いたいところだがそうもいくまい」
 地が鳴り、風が鳴る。身体を、骨を、揺らす地響きを不審に思う間もない。それは大地を割り砕くようにして地中から突如として現れた。白刃の切っ先。すぐにわかった。何しろそれは自身と同種の武器、槍だったから。しかし、大気を震わす恐ろしい咆哮はただの鋼から発せられる音ではなかった。生きている。そう認識したときにはもうすでに姉妹の手には一振りずつ真紅の柄が握られていた。赤い瞳が、差し向けられた刃が、ちらりちらりと奇妙に揺らめく。まるで蛇の舌が獲物を求めて盛んに出し入れされるように。捕食。その言葉に思い至ったとき、刀剣の付喪神の背を流れたのは冷たい汗だ。
「私たちを倒したきゃ須佐之男と十握剣でも持ってきな」
「そんなこと言うと奴が本当に現れそうだな」
「あ、ちょっとそれは勘弁」
 自分たちの言葉に自分たちで身震いする。おどけて、ふざけて、それでもまかり通る。なぜなら彼女らは人でなし。その肉体の生死など些末。古より日の本の国に生じ、姿を変えて存在し続ける「化け物」。それが本性、それが本質。ゆえに彼女らは戦場で笑む。不敵に八本の槍を掲げ、血の匂いを吸い込んで歓喜し、屍の気配を感じて陽気に吼える。
「さあさ、御照覧あれ」
「出雲のお国の八つの山と八つの谷を取り巻いて」 
「頭と尾はそれぞれ八つ、瞳は鬼灯、牙は金剛、滴る毒は岩さえ溶かす」
「「我ら八岐大蛇の出陣じゃ」」

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