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刀剣乱舞 いと愛しき共通項(前田藤四郎+審神者)

「前田は一期一振によく似ているな」
 筆を走らせる手を止め、こちらをじっと見つめてきたかと思えば前田藤四郎の主は感慨深そうにそう呟いた。突拍子のない発言の真意が掴めぬまま、前田が目を白黒させていると、違う違うと言いたげに彼女は片手をひらひらと振るう。
「見目の話ではなくて。口ぶりや所作や、こう雰囲気のようなものだ」
「雰囲気…ですか?」
「吉光の銘を持つお前たち兄弟は多かれ少なかれ長兄の影響を受けているのだろうが、前田は特にその色が顕著だと思ってな」
「そう、ですか」
「不愉快だったか?」
「い、いいえ!」
 ぶんぶんと首を振って否定すれば、主は少し驚いたような顔をしたあとに小さく口元を緩めた。
「いち兄に似ている、なんて光栄です」
「そうか」
「あの、」
「ん?」
「主君もやはり、いつも仰っている姉上様に似ていると言われたなら嬉しいのですか?」
 問えば、私が姉に?と主は首を傾げてみせる。彼女が折に触れて口に出す「姉」には万感の信頼と親愛が詰まっているように感じられたゆえの他愛もない問いかけに主が思いの他考え込んでいるのを見て当然前田は焦る。何か立ち入ったことを訊いてしまったのかもしれない。慌てて謝罪を口にしようとした前田の言葉を当の彼女の声が遮った。戦場に雄々しく立ち、部隊を鼓舞する女とは似ても似つかぬ微かな声色。ぬばたまの黒き瞳は憧憬に濡れ、思わず前田は息を呑む。
「そんなことは…生涯言われることはないだろうが…」
 そうだな嬉しいなあ、と落ちた言葉は雪のように儚く初秋の空気へと溶けた。その声色を、その顔を前田だけが知っている。我らが主君は強く、凛々しく、賢い理想の主。だからこそ、あなたにそんな顔をさせられる御方がちょっとだけうらやましいと彼女の忠実なる懐刀は思うのだ。

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